勉強会「サステナブルな『紙』ができるまで」開催レポート

その他

2026年1月14日、大阪・京橋にある鶴身印刷所さんにて「サステナブルな『紙』ができるまで」というテーマで勉強会を開催しました!

今回、勉強会を企画して下さったのはTEAM WAGIRIの皆様。
TEAM WAGIRIとは、建築家やグラフィックデザイナー、印刷工などさまざまな分野で活躍する6人が集まって、日常を「輪切り」にして捉え直すプロジェクトです。

2022年には「あたりまえの分解展 紙と印刷のDIY」展を開催。
今年は第2回の展覧会開催に向けて、準備を進められているそうです。

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TEAM WAGIRIの皆様から、せっかくなのでメンバー以外も呼びましょうと提案いただき、当日は合計16名の方にお話を聞いていただきました。

そして今回は、当社の矢田がお話させていただいたあとに特別ゲストをお招き! 後ほどご紹介しますね。

それでは、当日の様子を簡単にレポートします。

サステナブルな「紙」ができるまで

勉強会の様子
当社・矢田

当社はこれまで、数々のサステナブルな紙を開発、世に送り出しています。
今回は商品の紹介に加えて、紙が商品化されるまでのプロセスにも焦点を当て、お話ししました。

kome-kamiの開発から軌道に乗るまで

勉強会の様子

2019年、矢田とフードバンクの顧問をされている滋賀大学の准教授の方との出会いから、当社の商品開発は始まりました。

フードバンクは、まだ食べられるのに何らかの理由で廃棄されてしまう食材を集め、必要としている人や施設に無償で提供している団体です。
収益を生む構造ではない一方、食品を流通・在庫するための費用がかかるため、寄付や市の助成金では賄えず、理事の方が責任感で費用を負担している団体もあるそうです。

そういった問題をビジネスで解決したいというお話を聞き、その姿勢に共感した矢田は「紙でなんとかできないか」と考えました。

フードバンクでお話を伺う中でわかったことは、届いた時点で虫がついているなど、食べることができないお米も多いということ。

一方、紙についても調査を進めていくと、鎌倉時代から明治初期まで、お米が紙の原料に使われていたことがわかりました。お米を入れると表面がなめらかになり、紙の繊維の隙間が埋まります。その結果、美しい発色が得られたのです。

ここから、ロスになるもので誰かを助けられるような仕組みと一緒に、お米を使った昔の紙を再現したものを作れないかと考えるようになりました。

こうして開発されたのが、kome-kamiです。

kome-kami
kome-kami-FS(ナチュラル色)

紙にお米を入れるだけではなく、パルプを結合するための化学薬品にもお米を使用し、製造時に排出されるCO2削減に成功しました。

また、売り上げの1%をフードバンクに寄付し、支援を行っています。

kome-kamiの循環の仕組み

実は、商品化に至るまではトータルで4年ほどかかっています。
江戸時代までは手漉きで紙を作っていたため、お米を入れることも難しくはありませんでした。
しかし現代で手漉きの紙は大量生産できませんし、どうしても販売価格が高くなってしまいます。それでは売れず、フードバンクの支援にはつながりません。

支援できるほどの量産体制を整えるのは難しかったのですが、時間をかけて1つずつ課題を解消し、2022年に発売にこぎつけることができました。

当日は、一番最初に作ったkome-kamiを持参し、皆様にも見ていただきました。

左:1番最初に作ったkome-kami 右:今のkome-kami

今のkome-kamiと比較すると、かなり和紙に近い風合いですね。

2024年には、表面はラフでありながら、鮮やかな発色を実現したkome-kami浮世絵ホワイトを発売。

kome-kami浮世絵ホワイトのパッケージサンプル


2商品となったkome-kamiシリーズはポストカードやパンフレット、パッケージなどさまざまな場面でご使用いただいています。

正直なところ、2022年発売当時は本当に売れるのか心配な部分もありましたが、蓋を開けてみると多くの方に共感いただき、順調に売り上げが伸びていきました。
当社としては、新しいサステナブルな仕組みが作れたのではないかと考えています。

アップサイクル紙から薄炭クラフトの開発へ

kome-kamiの発売後、お米以外も混ぜられないかといった問い合わせが増えてきました。

2021年あたりから受託開発も取り組むようになり、オイシックス・ラ・大地株式会社様のミールキットの製造工程で発生するニンジンの皮を混ぜ込んだ「vegi-kamiにんじん」を皮切りに、ビールのモルト粕を配合した「クラフトビールペーパー」、お茶殻を抄き込んだ「茶紙」など、数々の製品開発に成功しています。

最近では、敷島製パン様と共同で、パン粉を活用した「パンの紙」をリリースしました。

アップサイクル紙のサンプル
当日配布したアップサイクル紙のサンプル

しかし、傷みやすい食材や油が多い素材は、紙に混ぜ込むことができませんでした。
あらゆる残渣を紙にするにはどうしたら良いかと考え、開発に至ったのが薄炭クラフトです。

薄炭クラフト
薄炭クラフト

そのままでは紙にすることができない素材を炭化することで、問題なく混ぜ込めるように。
さらにただの炭ではなくバイオ炭にすることで、脱炭素も実現することができました。

※バイオ炭…木材やもみ殻、農作物の残渣などのバイオマスを、酸素が少ない状態のもと、350℃超の高温で加熱して作られる炭化物。たとえば木材を放置すると微生物に分解され、吸収していた二酸化炭素を排出してしまうが、バイオ炭化すると二酸化炭素を炭の中に閉じ込めることができ、大気中への放出を減らすことができる。

薄炭クラフトは、日本最古の再生紙「宿紙」を再現した紙です。
昔は墨を使って書いていたため、その紙を使用して作った紙は薄いグレー色になりました。

その独特な色と風合いをバイオ炭と段ボール古紙で再現。
太古から続く循環する思想を現代に伝えます。

薄炭クラフトは、素材がコーヒー残渣でも野菜残渣でも、ほとんど同じ紙ができあがります。
今後はさまざまな企業様とコラボし、多種多様な残渣を元にした薄炭クラフトを作っていきたいと考えています。

紙の「サステナブル」の可能性をさらに広げる

勉強会の様子

現在、当社のサステナブルな商品開発は食品残渣の活用にとどまらず、さまざまな領域に広がっています。

・紙の製造時に排出されるCO2を実質ゼロにしたゼロCO2ペーパー

・CO2を固定化した炭酸カルシウムを使用し、最高の書き心地を実現したカーボペーパー

・自然な風合いと触り心地を追求したラフタクトーFS

これからも当社は紙を通じてサステナブルな未来を描いていきたいと考えています。

特別ゲスト:ウインター&カンパニー 高橋様

ウインター&カンパニー高橋様
ウインター&カンパニー 高橋様

矢田がお話させていただいたあと、スイスに本社を置くウインター&カンパニーの日本セールスマネージャー・高橋様をお招きし、お話ししていただきました。

ウインター&カンパニーは1892年の創業以来、コーティング紙や合成皮革、寄木細工、テクニカルファイバーなど多彩な製品を世に送り出しています。
この度、当社がウインター&カンパニー製品の取り扱いを始めることとなり、今回の勉強会の特別ゲストとしてお招きしました。

まず最初に、ウインター&カンパニーのサステナブルな取り組みを紹介した動画を見せていただきました。

勉強会の様子

「これまでリサイクル品を利用したサステナブルな製品は、デザイン性や耐久性など、何らかを犠牲にしたものが多かったのですが、ウインター&カンパニーの製品はそれらを両立させています」と高橋様。

海に浮いているペットボトルを集めてクロスにした製品(TOILE OCEAN)をご紹介いただきましたが、リサイクル品とは思えない美しい色合いです。

TOILE OCEAN

サステナブルな取り組みについてお話を伺ったあとは、高橋様が持参してくださった数々のサンプルを拝見。

勉強会の様子

色や風合いにこだわった意匠性の高いサンプルの数々に、参加者の皆様からは感嘆の声が上がっていました。

ウインター&カンパニー製品のサンプル

ウインター&カンパニー製品は、特に今まで日本になかった素材を使いたい、目新しいデザインの素材を使いたい方におすすめです。
ご興味を持たれましたら、当社までお問い合わせください!

さいごに

昨年9月のJAGDA兵庫地区の皆様への勉強会に引き続き、二回目の開催となった当社の勉強会。
今回も熱心にお話を聞いていただき、終了後は「とても楽しかった」「学びがあった」「たくさんの紙サンプルを見て触れて、幸せな時間だった」など、大変嬉しい感想をいただくことができました。

お忙しい中、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!

余談ですが、会場の鶴身印刷所は元・石版印刷の工場。
現在は文化複合施設として運営されています。
勉強会後は当日参加したペーパル社員で石版印刷機を見学させていただきました!
3月には石版印刷のワークショップを開催されるそうですので、ご興味ある方はぜひ鶴身印刷所さんのホームページをご覧ください。

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