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薄炭クラフトが提案する新しい循環のかたち-開発ストーリーと今後の展望
2025年11月1日、薄炭クラフトが発売開始となりました!
前回の記事では、薄炭クラフトを知る上で重要な3つのキーワードについて深掘りしましたが、今回は開発に至った経緯や紙に込めた思いをご紹介します。
なぜ今、古代の再生紙を現代に再現しようと思ったのか? 再現することで伝えたい思いとは?
そして、今後どのように展開していくのか?
ぜひ、ご一読ください。
薄炭クラフトとは

薄炭クラフトは、日本最古級の再生紙「宿紙(しゅくし)」の再現を目指した紙です。
宿紙とは、一度使った紙を再び漉いて作られた紙のこと。
当時は和紙でしたが、今回は現代風にアレンジ。
宿紙の独特の色や風合いを再現したパッケージ用紙として開発しました。
L判T目 27㎏、K判T・Y目 19㎏の3種類をご用意。
オフセット印刷、箔押しなどの加工適正も申し分ありません。
開発のきっかけ
きっかけは、開発担当者がたまたま参加した会で「正倉院に日本最古級の再生紙がある」と聞いたことです。それは約1,300年前の奈良時代の文書や写経の帳簿でした。
一度、墨で書いた紙を再び漉き直して作られた紙は、墨が繊維に残り、淡いグレーになります。
こういった紙は「宿紙」や「薄墨紙」などと呼ばれ、平安時代には官製の製紙場として設置された紙屋院でも作られていました。
天皇の命を伝える綸旨(りんじ)にも使われていたんですよ。

宿紙の文化は、形を変えながらも江戸・明治時代まで続きました。
つまり、日本には1,300年以上も前から、資源を大切にする文化が根付いていたのです。
日本でも“サステナブル”や“脱炭素”を意識した取り組みが加速するきっかけとなったSDGsが国連総会で採択されたのは、2015年のこと。
そのため、なんとなく新しい概念だと思いがちですが、SDGsの「資源を循環させる」考えは太古の昔から受け継がれてきたものだった……。
その事実に心を動かされた担当者は、「なんとしても、この宿紙を現代に再現したい!」と考えました。こうして、薄炭クラフトの開発プロジェクトはスタートしたのです。
宿紙が体現する文化も伝えたい

一度書いた紙を再利用した宿紙は、いわば再生紙。
SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」につながる「資源を循環させる文化」を体現しています。
当社では開発にあたって、見た目だけなく「再生紙であること」も踏襲し、宿紙が体現する文化を伝えていきたいと考えました。
宿紙の独特の風合いを再現でき、なおかつ再生紙となる素材はあるのか……。
当社の得意とするアップサイクルの観点で素材を検討し、たどり着いたのはバイオ炭と段ボール古紙でした。
バイオ炭は、木材やもみ殻、農作物の残渣などのバイオマスを、酸素が少ない状態のもと、350℃超の高温で加熱して作られる炭化物です。
薄炭クラフトでは、コーヒーや野菜などの食品残渣を原料としたバイオ炭を紙に混ぜ込むことで、宿紙独特のグレーを再現。さらに、本来捨てるはずだった食品残渣を生かす「資源の循環」も実現することができました。
もう一方の素材、段ボール古紙。
現存している宿紙は長い年月を経て、やや黄みがかった色になっています。
この黄みがかった色の再現はバイオ炭だけでは難しく、段ボール古紙と組み合わせることで、本来の宿紙の色に近づけることに成功しました。
こうして、薄炭クラフトは、バイオ炭とダンボール古紙からなる古紙100%の再生紙として誕生したのです。
宿紙の持つ「荒さ」を求めて
開発にあたっては正倉院の担当者の方に何度も試作品を確認してもらい、フィードバックをいただきました。
フィードバックの中で最もご指摘をいただいたのは、「荒さが足りない」ということ。
試行錯誤を繰り返し、現在の風合いにたどり着きましたが、今後はさらに荒さを追求すべく、表面にやすりをかけたバージョンも試作中です。
販売開始になったあかつきには、改めてご紹介いたします!
薄炭クラフトが目指すもの

当社が薄炭クラフトの販売と普及を通じて提案したいのは、新しい循環のかたちです。
・価値のなかったものを、価値のあるものへ
薄炭クラフトに使われているバイオ炭の原料は、コーヒーや野菜などの食品残渣や使われなくなった衣服など、本来なら廃棄される素材です。
そういった素材を紙に使うことで、価値のあるものへと生まれ変わらせます。
最古の再生紙を現代のサスティナブルな取り組みで再現する。
今までになかった、新しい循環のかたちです。
・バイオ炭の普及
バイオ炭は、ただ未利用資源を炭にできるだけではありません。
生物資源の中にある炭素を炭の中に閉じ込め、大気中への放出を防ぐ脱炭素の効果もあるのです。
さらに、土に埋めることで半永久的に炭素を固定できるとともに、土壌改良効果も報告されており、地球温暖化対策の新しい素材として注目を浴びています。
企業や地域が残渣を廃棄するのではなく、資源(バイオ炭)として活用する「現代の循環型文化」へ。
当社は、薄炭クラフトを通じてバイオ炭の存在を広めることも目標にしています。
さいごに
日本最古級の再生紙「宿紙」を現代に再現した薄炭クラフト。
バイオ炭の粒子と段ボール古紙の繊維が生み出す独特の風合いは、紙らしい素朴な味わいでありながら、上品さも兼ね備えています。
パッケージはもちろん、名刺やDM、メニュー台紙などさまざまな用途でご使用いただけます。
使用事例は今後、Instagramでも更新予定ですので、ぜひフォローお願いします!
ご興味を持たれましたら、ぜひ一度、お問い合わせください。お待ちしております。
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